今何をしているのかと常套の文言を返すと、名刺を一枚ずつ我々に手渡した。円の中に黄色と青色の銀杏の葉っぱ収まっているちょっと生意気そうなそれだった。彼を見て、ある日の授業風景が頭を過ぎった。彼は始業チャイムが鳴っている間に入ってきて最前列の廊下側2列目の席に着く。1時間目の授業のときはいつもそうであった。そして鞄を机の上に置き、顎を乗せて黒板の問題を眺める。全員が取り組んでいるのを確認して、「S本、わかるか。」と訊く。ん、あ。と反応して徐にノートを取り出し汚い字でぐちゃぐちゃ始める。暫くしてもう一度訊くと、「ん。」といってさらにごちゃごちゃ書き殴る。「あ。」(できたか)が彼との授業の導入であった。
セミナーハウス(その6)

