数学プリント

最近手書きのプリントを見なくなった。
数学は独特な記号や図形が多く、word のようなソフトではなかなか思ったものが作れない。
教員になったころはガリ版印刷から、手書きの教材を焼き付けて印刷する、プリントごっこの巨大版のような道具に移行したころであった。これは画期的で、鉛筆で書いたものを印刷できるので書き直しや訂正が簡単になった。また並行してドナルド・クヌース (Donald E. Knuth) が開発し,広く有志による拡張などが続けられている組版処理システムTeX (テフとよむ) の登場で数学の印刷物は大きく変わった。
数学の論文をTypewriterで書いているのを見たことがあるだろうか。紙をしっかり固定してずれないように黒色の活字を打ち込んでいく、数学用のタイプライターは などの積分の記号も備えていてそれらを打ち込み終わると一文字分紙が移動する。すごいのは間違えたときに、一文字分戻って白色の活字を打ち込んで訂正することができる、紙が正確に移動するのできちんと修正できるのだ。今でいうホワイトや修正テープで文字を白塗りするようなことを、その文字そのものの部分だけを正確に白字で修正できるのが優れものであった。しかし紙の固定や文字の配置などでとても苦労することは想像できるだろう。
それがTeXの登場により、さらにはそれを日本語に対応したLaTeX の登場により一変した。
さらにそれを身近にしてくれたのが奥村晴彦氏のLaTeX2ε美文書作成入門である。私はこの初版第11刷を買いわくわくして読み込んだのを覚えている。
ノート型パソコンにTeXをインストールして、Hello, TeX が文字で現れたときは感動ものだった。
今年もいくつかの学校の数学のテスト問題などをみると、中学はおそらくword か何かの手作り的なもの、あるいは印刷所に頼んで作成したと思われるプリントで、高校はいずれも study●●● で作成したものであった。
私のTeXの師匠は上田高校で退職した柳沢さんで、若いときにかなり色々教えてもらい定期考査の問題や授業プリントでTeXが使えるようになったのは彼のおかげである。5年くらい前に部活の関係で上田高校にいったときに久しぶりに話ができ、しかもTeXで作成した最近のテキストファイルをたくさん頂き、TeXの使用法をまた参考にさせていただいた。相変わらず彼はすごい。
TeXの難点は図形に関する部分であったが、最近はそれを解決できるものも多くあり、何よりもすべてが無料であることがありがたい。一緒に学年をもった Kさんは若いながらにTeXで数学プリントをすべて作成していて久しぶりにTeXの話ができて楽しかった。
TeXはそれぞれの人が何か手法をもっていて、やはり直接話すのが勉強になる。かなり昔にある高校で数学の教育実習生がTeX で研究授業の教案を作成していて、授業の流れのタイムテーブルがページをまたぐときに、外枠がそのまま次ページへつながっていた。TeX においてはそれは普通のことではなかったので彼に訊くと supertabular を使用したという。彼の友だちも普通に使っているといっていた。東大工学系の大学院生だけあって、彼の教案の仕上がりはとてもきれいに整っていた。肝心の数学の授業について記憶に残っていないのは申し訳ない。その後、早速 supertabular のスタイルファイルを入れてつかってみたことは記憶に残る。今はもっと手軽に手に入るさまざまなツールがある。TeX関連は基本的にすべて無料である。興味がある方は是非 TeX での教材作成も選択肢にいかがだろうか。数学のプリント作成が格段に楽しくなることは間違いない。また、今でも手書きプリントを作成している方は、味のあるその方の人間味が現れる上質の教材であることは間違いない。私のような未熟者はやはりTeXに頼ってしまうという話である。