お手紙拝見。詳しく申すと限りがありませんが、急がしいので書く暇がありません。はがきに収まる程度に御返事します。
母校諏訪中学校の校風で一番よかったと思うことは自治の精神にみちていたことです。
私は一高へ入った時、世に有名だった一高の自治もそう珍しく思いませんでした。それほど諏訪中学の自治は進んでいたのです。地方の会にせよ、矯風会にせよ、その精神が裏附けになっていました。矯風会等も上級生がしっかりしていない時は、徒に圧迫するようなことや、つまらぬ枝葉の問題を責めたりすることもありましたが、生徒相互の間で戒め合という精神はいいことであったと思います。ある学友会長は、開口一番同級生である五年生に真先に反省をもとめたものでした。
自治は責任をともなうものですが、その責任感も備わっていて概ね立派に学友会を運営し、学校生活をゆたかにしていました。当時掲げられていた質実剛健の標語も、それが動脈硬化的に解せられない限り推称さるべきものであったし、今もかわらぬよさを有するものだと思います。
現在の生徒諸君に希望することは、自ら考え、責任を以って自主的に行動し、自ら律すると共に、外からのすぐれた意見を謙虚にきくことです。十分つくせませんでしたがこれで。
(新宿区下落合四ノ一五六三)
昭和30年4月

